幾年の愛を
「大きくなったじゃないか」
「君のお母さんの写真に似てきたね」
どうしてお母さんの写真なんか…
いやだいやだいやだいやだ…
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…
近づくな…寄るな…もうなにも
話したくない!
「こ、こないで!」
だから、来たくなかったんだ。
こいつらがいたらって
会ってしまったら…私は冷静でなんか
いられない…
「随分な態度だね?あの時せっかく
助けてやったのに」
まだこいつらは否定するんだ。
無関係だと思ってる。こいつらが
急いでいたら…話なんてしていなかったら
兄さんは助かったかもしれないのに!
「かえしてよ…かえして!」
私はそこにあったものを構わずに大人達に
投げつけた。
ただただあの人のためだった。
『兄さん!』
あいつらが話をしている間に
息を引き取った兄さんは
最後に私をみるなり『ごめん』だけを
言い残して死んでしまった。
暖かかった身体もどんどん冷たくなって…
「わかるんけないよね!あんた達が
話なんてしていなきゃ兄さんは助かった!
あんた達にわかる?どんどんどんどん
冷たくなっていく家族を
黙ってみてることしかできなかった私の
気持ちが!」
わかる訳ない…こいつらは
子供が面倒だったんだ。
早く死んでしまえばいいと思っていたんだ。
どうして…どうして兄さんなの?
何で私じゃないの?