幾年の愛を


「大丈夫?」

私が声をかけると女の子は泣きながら
服を綺麗にしようとしていた。

「服…綺麗にしないと…また怒られる」


泥を払っているときに見えたあの子の
腕には無数の痣があった。
多分、それは腕だけじゃない。
身体中が傷だらけだ。


「大丈夫。服は汚れても洗えばいい…
でも、怪我は簡単には消えないでしょ?」


泣いている女の子の涙をすくい上げながら
私は頭をなでた。
中に戻ろうとしたとき、後ろから
何かが飛んでくるのに気が付いた。
とっさに女の子の前にでた私はもう
どうしようもなかった。

だけど、その悪魔はそのまま切られ地面に落ちた。


「あぶねぇだろうが!」


急に怒られ、上を見上げると男の人が
1人立っていた。
私は何の確証もないのに、
この人を紅葉君だと思った。
きっとこの人がそうなんだと…


「ほら、とっとと戻んぞ」


紅葉君はそうは言いながらも私達の
歩幅に合わせながら歩いてくれていた。
根は優しい子なんだろうな…
ただ、それを表すのが下手なだけ…


女の子を医務室に預け、私達はまたあの部屋に向かっていた。
ここでいえたらいいけど、
そしたら迷惑かもしれない…
鬱陶しいと思われるかもしれない…
それだけはいやなんだ…


 
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