幾年の愛を


嘘だ…本当は覚えてる。
でも、認めたくないんだ…
自分があんな力を持っていたことから
逃げたいだけ。



「大丈夫だったか、采羽」

「冬吏さん…すみません」



冬吏さんは私の頭に手を乗せてから
女の子を抱き上げ男の人に渡した。



「あの、もう一度だけ顔を見せてくれませんか?」


男の人はまた戻ってきてくれて
見せてくれた。


怪我も大したことはない…
よかった…
そう思っていると女の子は目を覚ましたようだ。


私が頭を撫でようと手を伸ばすと女の子は
それをはねのけた。


「イヤっ来ないで!…バケモノ!」


何…やってるんだろ…
毎回のことじゃない…本当の私をみせれば
皆か離れていく…
あの夜だって今だって…そうなんだから



信じたら…駄目なんだ…




「采羽」

「大丈夫です(ニコ」



大丈夫だよ…いつものことなんだから
こんなのなれてるんだから…


ふと、紅葉君の方を向いてみると
まだ血が止まっていなかった。



「あの、怪我」

「大丈夫だ」


そのまま行こうとする紅葉君の背中を
少しだけ触る。


少しでも傷が治ってくれればいいけど…



「行きましょうかクロ」


「あぁ」



冬吏さんが用意してくれた車で私たちは
十六夜館に向かった。


   side采羽 end

 
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