幾年の愛を



前の…か…


あの人は私達を必要とはしなかった。
言葉ではどう言っても良いことにしか聞こえない事でも
私たちにとったらそれは…



『必要じゃない』と言われているようなものだ…
それが…苦しくて…憎んだ…



でも、この人は違った…



初めてあったのはたしか…この人が5歳の頃だった…
何も知らない子供はいつも泣いていて…
でも、私が現れたとき采羽様は笑ってくれた。




その時の笑顔と言葉は今でも覚えている。




『私がもし困ったら助けてくれる?
そしたら私も…助けるから…
だから、貴方の笑顔を私に見せて?』




自然と私の手は采羽様の手の上にあった。
無意識に安心感を覚えたんだ。
まだ子供のこの人に…



今度は私がこの人の手をとろう…
安心して歩んでいけるように…
ずっと笑ってくれるように…




私が貴方を裏切る?
そんなのは一生ありませんよ…






  side千月 end









 
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