桜の舞う世界













目を閉じて意識をなくした巫女を抱き抱え








横に寝かした










「愛おしい巫女よ、呪いをかけた事に後悔していないが俺を忘れさせた事に後悔している自分を許してくれ」







落ちたお面を拾いまた付け直した












「もうすぐ、鈴彦が戻ってくるな、今すぐ此処を離れなくては」







……………………………………





















ひと通り離れた場所で






ひと息つく









「巫女が目を覚ましたらもう俺についての記憶は無くなっているのだな。」







巫女は将来俺のことを忘れたまま結婚し







俺のことを忘れたまま子を産み





俺のことを忘れたまま、別の男と幸せに過ごすのだな















「嫌だな………これからもずっと」






この想いがあと死ぬ限り残り続けるのか…












この村を以前のように戻したいがために








妖に村を襲わせたが今は






巫女を守りたい気持ちが強いから







もう、こんな事はやめにしょう






巫女はきっとこんな事したくないのだから











そう決め村中の妖に力を使って





『もうこんな命がけの戦いは終わりにするのだ』




『妖の世界に戻るぞ』








妖達に伝えた








「これで村に妖が襲うことは無くなった」








あとは俺の命を地に落とすだけ








「だれとも結ばれることなく数千年生きるのならば喜んでこの命、地に捧げよう」





俺はこの先、恋をする事が無いのだから__













『我の力を使い我自身の命を地に落とす』











蒼い光がポワッっと包んでいく







『我の身体は誰のものになる事なく朽ちていけ__』










『我の名は静月希、我に絶命の呪いを…っ』










言い終わる前に蒼い光が自分の胸を貫いた












息が詰まる感覚に私は立っていられなくなる











頭が地面についた時






正しい息はもう出来ていなかった










ヒュー…ヒューと音を鳴らしながら呼吸をする











『愛おしい巫女姫、どうか幸せに……』











どうか、いつか、思い出して俺の事を










俺の名を………また、











『…………………………………』
















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春の生暖かく




星が点々とした


満月の夜に






一人の男が息を引き取った……






その瞬間









蒼い光が彼を包んで光を帯びながら











彼と共に消えていった









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