桜の舞う世界










そう言いながらお母様は











私に初めて笑顔を見せてくれたのだった……















翌日




……………………………………




















ガラガラ







お婆様がいる病室のドアを

お母様が開けた













「お婆様……遅くなってしまいました」








「久しぶりだね、笑美瑚」





「はい。お婆様………」







「笑美瑚、お前の名の由来を知っているか?」








お婆様がお母様を見ずに言った











「聞いたことがありませんわ」











「そうか………この際お前に教えよう」







お婆様は一度目を瞑り






口を開いた










「笑美瑚の名の由来はね、……
美しく笑顔を作る女性になります様にと
想いを込めて私がつけたのだよ」







「お婆様……」







お母様の瞳を見てみると






その瞳は涙を浮かべていた








「お婆様、素敵な名をありがとうございます」







そう言うお母様は華やかに笑っていた















その顔を見たお婆様は







「………っ…笑美瑚。お前の笑顔は知らぬ間に
美しく変わったね………」









力なく言葉を発するお婆様





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