【童話】てのひらに雨
てのひらに雨
しとしとしと、

しとしとしと、

しとしとしと、

しとしとしと…………。


さいきん、たくさんふる。
ママは7月になったら晴れるよって言ったけど、ぜんぜんそんなことない。

きらいじゃないけど、毎日ふられると、たいいくが中になって、とびばこになるから、ちょっとだけ困る。

だけど、いいことがあるからわたしは好き。

れいくんと一緒に帰れるから。
あの空色のカサをさして、ふたりで校門まで歩くの。
そうして、そこでわたしのママが迎えにくるのを待って、ママの車でれいくんのおうちに行くの。

だからだいすき。



だけど、今日の朝、ママがおうちを出るまえに、わたしに頼みごとをした。

今日はお迎えに行けないわ。
おうちに帰るのも、6時をすぎちゃうの。

いいよ。
わたしひとりで帰れるし、おるすばんもできるから!

わたしは寂しいかなと思ったけど、ママに心配かけたくなかったから、へいきなフリをした。


ごめんね。
できるだけ早く帰るからね。


そう言って、ママはわたしを車にのせた。

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