鬼上司は秘密の恋人!?
祐一が寝てしまったあと、どうしても寝付けなくてリビングでぼんやりとしていると、玄関から物音が聞こえてきた。
驚いて顔を上げると、疲れた顔をした石月さんが帰ってきた。
「起きてたのか」
びっくりして立ち上がった私を見て、薄く笑う。
「石月さん、今日は編集部に泊まるんじゃ……?」
「ん。どっかのガキが、寂しがって泣いてんじゃねぇかと思ったら落ち着かなくて、仕事片付けて帰ってきた」
からかうようにそう言った石月さんに、くしゃりと顔が歪んだ。
「寂しがるわけ、ないじゃないですか……」
歪んだ顔を見られたくなくて、俯く。
「そ?」
試すようにそう言って、指先で俯いた私の顎をすくいあげられた。
至近距離で見つめられて、慌てて視線をそらす。
「そうです。今までずっと祐一とふたりっきりで暮らしてたんだから、一晩石月さんがいないだけで、寂しがるわけなんてないです」
「でも、目が赤い」
「さっき、あくびをしたからです」
「本当に?」
誘うように問われ、唇を噛みしめる。
からかわれているだけだって、わかっているのに、こんなにドキドキしてしまう自分が悔しい。