鬼上司は秘密の恋人!?
「なんだかすごく、石月さんらしいですね」
「でしょう」
徳永さんと顔を合わせてこっそりと笑い合う。
「週刊誌の編集長からは時間の無駄だって文句を言われてたけど、ベテラン政治家たちからはこんな雑誌記者は珍しいって可愛がられてた。物怖じしないし、正義感も強いし、行動力も決断力もあるから、今の経済産業大臣の蜂谷先生に気に入られて、『うちの私設秘書にならないか』なんて声をかけられてたらしいよ」
「石月さんが、政治家の秘書……!?」
しかも大臣を務めるような大物政治家の。
テレビでよくみる強面の経済産業大臣の姿を思い出してぎょっとする。
絶句している私を見て、徳永さんはクスクス笑った。
「まぁ、半分以上冗談だろうけどね」
はぁーっとため息をつきながら石月さんのことを眺める。
誰にでも物怖じしないし仕事のできる人だとは思ってたけど、そんな大物政治家にまで気に入られてしまうなんて、すごすぎる。
「――では、こちらは私共の方で確認させていただきます」
宮越議員の秘書がそう言ってゲラの入った茶封筒をバッグに収め、頭を下げた。
いかにも秘書という感じの、グレーのシンプルなスーツにシルバーのフレームの眼鏡を掛けた五十代の男の人。
そのポジションにいる石月さんを想像して、やっぱり似合わないなと心の中で笑ってしまう。