鬼上司は秘密の恋人!?
その時、編集部をあちこち見回していた宮越議員と目が合った。
その瞬間、彼が僅かに眉をひそめた。
「あれ……?」
そう言ってこちらに近づいてくる。
なんだろう、と私が肩を強張らせると、宮越議員は長身をかがめ、私の顔をのぞきこむ。
「もしかして、どこかで会ったことある?」
記憶を探りながら自信なさげに問われ、私は慌てて首を横に振った。
「いえ、私はよくテレビで拝見していますが、お会いしたことはないです」
「そう? 誰かに似てるのかな。名前をお聞きしてもいいですか?」
「白井、有希です」
私が小さな声で言うと、「白井……」とつぶやくように繰り返す。
「うちの白井がどうかしましたか?」
頭上で低い声が響き、肩に手を置かれた。
驚いて顔をあげると、険しい顔をした石月さんがいつの間にか私の後ろに立っていた。
その冷ややかな視線に、宮越議員はハッとしたように表情を変え「なんでもないですよ」と、にこやかな笑みを浮かべた。