鬼上司は秘密の恋人!?
「由奈が……、姉が事故にあったときのことを……」
私がそう言うと、石月さんは無言で頷く。
「どうしてあの時、あの道を通ったんだろうって。どうして私が車道側を歩いてなかったんだろうって。どうしてもっと周りに注意してなかったんだろうって……!」
言葉を遮って、石月さんが乱暴に私の体を抱きしめた。
口を塞ぐように肩口に頭を押し付ける。
そして、震える私の頭に頬をつけ石月さんが無言で頷いた。
その小さな仕草だけで、わかってもらえてるんだと思った。
きっと石月さんも、小さな頃から何度もそんな後悔を繰り返してきたんだろう。
あの時あんなことを言わなければ。
あの時こうしていれば。
どんなに後悔しても、もう遅いんだと分かっていても、自分を責めずにはいられなかった。
私たちは、同じ傷を背負ってる。
ひとりじゃないんだと言われたようで、ほっとすると同時に胸の奥が熱くなった。
少しずつ呼吸が整ってきて、ゆっくりと息を吐き出す。
するとそれに気づいた石月さんが、私を抱きしめる手を緩め、立ち上がった。
向こうの部屋に行ってしまうのかな、と思いながら見上げていると、手を差し出された。
「こい」
そう言われ、驚いて目を見開くと、石月さんは小さく笑った。
「一緒に寝るぞ」
「え……!?」
当然のように言われて、混乱しながら瞬きを繰り返す。