鬼上司は秘密の恋人!?
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「ママ、おんせんすごくたのしかったんだよー! これ、おんせんまんじゅうだよ」
祐一がそう言いながら、由奈の写真の前にお水と温泉まんじゅうを置く。
顔をキラキラ輝かせて温泉旅行のことを報告する姿を眺めながら、私はキッチンでお弁当を作る。
大中小、みっつのお弁当箱におかずをつめていると、まだ眠そうな顔をした石月さんがリビングに入ってきた。
「おはようございます」
「あ、トーゴ。おはよー」
「んー。はよ……」
あくびを噛み殺しながらこちらに近づいてくる。
そして並んだお弁当箱を見下ろして、微かに首を傾げた。
「なんだこれ、ミニトマトがハートの形をしてる」
秋鮭のみりん焼きに大葉みそを添えた厚焼き卵。
アスパラの肉巻き、ピーマンのおかか和え。
その隙間を埋めるように入れたミニトマトを石月さんは指差す。
「切り方でこうなるんですよ」
祐一のお弁当と私のお弁当をのぞき、それから石月さん用の二段のお弁当箱を見た。
「俺のだけなってない」
ふてくされたように言われ、慌てて石月さんの顔を見る。
「えっ、石月さんのもハートにしたほうがよかったですか!?」
そんなことをしたら鬱陶しがられると思って、石月さんのお弁当はいつも極力シンプルにしていたのに。