鬼上司は秘密の恋人!?
ぼんやりと目を開けると、こちらを見下ろす石月さんの顔が見えた。
どうして石月さんが……?
二度三度、瞬きをしながら首を傾げると、大きな手が私の額に触れた。
「まだけっこう熱はあるな」
独り言のようにぽつりとつぶやき、私の顔を覗き込む。
「大丈夫か?」
そう問われ、混乱しながら頷いた。
そうか、私風邪を引いて会社で具合が悪くなって……。
「温泉に行って、疲れがでたのかもな。連れ回して悪かった」
石月さんが優しい口調でそう言った。私は慌てて首を横に振る。
「連れ回すなんて。温泉、すごく楽しかったです。ありがとうございます」
「そ?」
小さく首を傾げ、目を細める。
柔らかい表情で見下され、居心地が悪くて視線を泳がせた。
そして部屋の中を見回すと、暗くなった窓の外が見えた。
はっとして慌てて起き上がる。
「大変! 祐一のお迎え……!」
そう叫んだ私を引き止めるように、石月さんが私の肩を抱いた。
「大丈夫。落ち着け」
急に起き上がったせいで、くらりとめまいがして頭を抱えると、石月さんは私の肩を抱いたまま、布団に寝かせてくれた。