鬼上司は秘密の恋人!?
 
「ちゃんと迎えに行ってきた。風呂も入ったし飯も食ったし、今はリビングで本を読んでる」
「あ、ありがとうございます……」
「心配してたぞ、お前のこと。具合が悪くて寝てるっていったら、邪魔をしないように、ちゃんと大人しくしてくれてた。あとで褒めてやれ」

そう言われ、安堵がこみあげて目元が熱くなる。

「はい……」

こぼれそうになる涙を、必死に歯を食いしばってこらえていると、石月さんが心配そうに私のことを見た。

「具合、悪いか?」
「いえ」

口元を押さえながら、首を横に振る。

「……ただ、安心して」
「安心?」

首を傾げた石月さんに、涙をこらえながら口を開く。

「由奈が、姉が死んでから祐一とふたりっきりで、私がしっかりしなきゃって。私がいないと祐一が困るんだって、ずっと気を張っていたから。具合が悪いときも、必死で平気なフリをしてきたから。なんだかすごくホッとして……」

言いながら涙が出てきて、誤魔化すように手の甲で乱暴に目元をこすった。

「石月さんに迷惑をかけて、本当に申し訳ないしずうずうしいんですけど、頼れる人がいるのって、こんなにホッとできるんだって思ったら、なんだか力が抜けて」

ひくひくと、しゃくりあげながらそう言った私を、石月さんはあきれたように笑った。
そしてガシガシと乱暴に頭を撫でてくれた。

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