鬼上司は秘密の恋人!?
8
その人は、突然私達の前にあらわれた。
幼稚園から祐一とふたりで帰る途中、静かな住宅街に止まった一台の黒い車。
傷ひとつ、汚れひとつついていないピカピカのセダンは、住宅街には不釣合いで、不思議に思いながら横を通り過ぎようとする。
すると静かに運転席が開いた。
まるで私達がその道を通るのを待ち伏せしていたかのように。
驚いて、ぎゅっと祐一の手を握る。自分の体の後ろに祐一を隠し身構えた私を前に、その人は笑いもせずに静かに言った。
「白井有希さんと、祐一くんですね」
感情のこもっていない、温度の低い声だった。