鬼上司は秘密の恋人!?
「住む場所はこちらで用意します。その代わり有希さんは仕事を辞めてください。祐一くんの幼稚園も転園して、石月さんとはもう一切連絡を取らないという約束をしていただければ、生活に困らないように金銭面でも援助させていただきます」
「どうしてそんな……」
「宮越本人が祐一くんの存在を知らなかったとしても、隠し子がいることがメディアにバレれば大ダメージです。しかもその子供が元週刊誌の政治担当記者の家で暮らしているなんて、こちらにしてみれば、大きなネタを人質にとられているようなものです」
「お金を払うから、私たちは邪魔にならないように大人しくしていろってことですか?」
歯ぎしりをするようにそう言うと、長尾さんが静かに頷いた。
「物分りが早いようで助かります」
「そんな条件、のめません……!」
怒りで声が震えそうだった。
自分たちの都合ばかりを押し付けて、私達の気持ちなんて一切考えていない傲慢さに苛立った。
「条件がのめないのは、石月さんに好意をもっているからですか?」
唐突にそう言われ、驚いて息を飲んだ。
「自分の恋愛感情を優先して、祐一くんのことは二の次ですか?」
「……どういう意味ですか?」
戸惑う私を畳み掛けるように、長尾さんが口を開く。
「だって考えてみてください。有希さんと祐一くんはずっとあの家で暮らせるわけではないんですよね? 今の不安定な状況と、きちんと後見人を得て援助を受けられる生活、どちらが祐一くんのためになると思います?」
そう言われ、黙り込む。