鬼上司は秘密の恋人!?
「どうしたんだ、そのおもちゃ」
仕事から帰ってきた石月さんは、和室にいる祐一を見て首を傾げる。
祐一は、たくさんの新しいおもちゃで遊んでいた。
料亭の個室で長尾さんと話し合いを終えた後、別室で待っていた祐一は、たくさんのおもちゃをもらって上機嫌だった。
レールで走る電車のおもちゃに、ヒーローの変身ベルト。
キラキラと顔を輝かせ興奮する姿に、思わず脱力してしゃがみこんだ。
震える腕で笑顔の祐一を抱きしめると、祐一はきょとんとして『ゆき、どうしたの?』と首を傾げた。
そんな私と祐一を見下ろした長尾さんは『祐一くん、そのおもちゃは全部あげるから、かわりにこのお店に来たことは内緒にするんだよ』と、静かに笑った。
本当はこんなおもちゃ、全て突き返したかったけれど、おもちゃを意地でも離そうとしない祐一と、受け取ってくれないなら今すぐ捨てると言い放った長尾さんに根負けして、仕方なくもらってきてしまった。
「もらったんだ!」
変身ベルトをつけたまま、祐一が石月さんに走りより自慢げに胸を張る。
「ふーん。誰に?」
「ええと、由奈の、姉の知り合いに会って……」
首を傾げてこちらを見られ、私は慌てて言い訳を口にする。
「俺には祐一におもちゃどころか、お菓子を買っても贅沢させるなってすぐ怒るくせに」
ふてくされたように私を睨む石月さんに、ぎこちなく笑って目をふせた。