鬼上司は秘密の恋人!?
「そうだね。あの飴、今度探してみようか」
「うん!」
元気よく頷いて立ち上がる。
「よしじゃあ、保育園まで競争しようか」
私がそう言うと、興奮と寒さで頬を真っ赤にして祐一が頷いた。
祐一は、幼稚園が変わってしまうのを少し寂しがっただけで、なんの文句も言わなかった。
あんなに懐いていた石月さんの家を出るとこも、落ち込んではいたけれど、嫌だとは言わなかった。
いつも以上によく笑い、元気に過ごしてくれている。
その姿を見ると、少し救われる。
でも、口に出さないだけで、たくさん我慢をしてるんだろう。
そんな生活をさせているのが、悲しかった。
泣いて、子供らしく駄々をこねさせてあげたいのに、大切なものを失うことに慣れすぎて、我が儘を言うことさえ諦めさせてしまっているようで、無力な自分が悔しかった。
「今日は晩ごはんなに食べたい?」
保育園までの道を走りながら、隣にいる祐一にそう聞く。
「うーんとね、さつまいもがはいった豚汁!」
祐一の言葉に、笑顔が強張った。石月さんの好物だ。
真っ先にそう思ってしまう。
「いいね。寒いから、温かい豚汁食べたいね!」
強張った笑顔を取り繕うように、わざと大きな声でそう言う。
すると祐一はこちらを振り返って、白い息を吐きながら「うん!」と元気に笑った。