鬼上司は秘密の恋人!?
 
「いつもイライラして周りに当たり散らすし、なにかあるとすぐ隣のコレクトの副編集長とケンカするし。本当に迷惑」

私のせいだ。私があんな、恩を仇で返すような出て行き方をして、石月さんが怒らないはずがない。

「もう、さっさと白井さんとくっついてくれればよかったのになぁ」

その徳永さんの言葉にぎょっとして顔を上げた。

「え……!?」
「白井さん、もしかして石月チーフに惚れてるの、バレてなかったつもりなの? 悪いけど、バレバレだったよ。一緒に暮らしてるのも、石月さんが白井さんを特別だと思ってるのも」

驚く私の顔を見て、徳永さんが笑う。

「白井さんがうちの編集部に来てから、石月さんの毎月恒例のあれ食べたいこれ食べたいって羅列して唸るのなくなったし、いつも美味しそうなお弁当持ってくるようになったし、中身白井さんのお弁当とおんなじだし、なにより女遊びしなくなったし」
「お、女遊び……?」

徳永さんの言うこと全てに驚いたけど、最後の言葉に飛び上がる。
目を見開いて顔色を変えた私を、徳永さんはくすくす笑いながら見下ろしていた。

「そうそう。石月さんって真剣には女の人と付き合わないけど、遊びであっちこっちの美人に手を出すから困ってたんだよね。受付の女の子とか、ファッション誌に出入りするヘアメイクの子とか」

確かに恋人は作らないとは言ってたけど、モテる石月さんだから、遊びでもいいから一緒にいたいと思う女の子はたくさんいそうだ。
ショックで思わず絶句する。
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