鬼上司は秘密の恋人!?
「ステートメントへの圧力もそうだ。広告主の信和製薬に連載を持っている政治アナリスト。支援団体や政界の繋がりを探れば、どこからの圧力かなんて、簡単に想像できる」
無反応の長尾さんに、石月さんは言葉を続ける。
「そちらの差し金だとバレないとでも思いましたか? それとも、バレたとしても相手が政治家なら、俺が尻尾を巻いて黙り込むとでも?」
「……そうですね。もう少しあなたは賢いと思っていましたね」
「どういう意味で?」
石月さんは小さく首を傾げ、顎をしゃくる。
勿体ぶるんじゃねえという表情で先を促す。
「こちらは単独で六十以上の議席を有する参議院の与党第一党ですよ。こちらの機嫌を損ねれば、あなたの今いらっしゃる情報誌には影響がなくても、他の部署ではどうなるだろうという想像くらいは出来ると思っていましたが」
「……くっだらねぇ。党の代表気取りかよ」
ちくりと刺さる鋭い視線を、石月さんは鼻で笑う。
「総裁か、幹事長にでもなったおつもりですか? あなたのやってることこそ、党のお偉いさんの機嫌を損ねるのでは?」
石月さんの言葉に、長尾さんは不愉快そうにぴくりと眉を動かした。しかし口を開く前に、また石月さんが話し出す。
「……まぁ、その話は後においておきましょうか。白井の一件で、とても不思議に思ったんですよ。なぜ宮越さんと白井の姉、由奈さんとの仲を、あなたがそこまでムキになって破局させたのかが」
長尾さんが眉を寄せる。
その表情を見て、石月さんは薄く笑った。