鬼上司は秘密の恋人!?
「なんですかそれ……」
恥ずかしくて顔を赤くして睨むと、石月さんは鼻で笑った。
「突然人を呼びつけといて、目の前でイチャイチャするな、馬鹿者が」
突然低い声が響き、ぎょっとして振り向くと、すっかりお酒を召されて上機嫌になった蜂谷大臣が、ふらふらとした足取りでお店の玄関から出てきた。
「くだらないことに、つき合わせおって」
赤ら顔で石月さんのことを睨む。
「ありがとうございます」
「この貸しは安くないぞ」
「自分にできることでしたら、なんでも」
「じゃあ、うちの秘書にでもなるか」
蜂谷大臣が鼻で笑ってそう言った。
その言葉に私は青ざめる。
そういえば石月さんが週刊誌の記者だった頃から、蜂谷大臣が秘書にならないかと声をかけていたと、徳永さんが言っていた。
「だ、ダメです……!」
私が慌ててそう言うと、石月さんと蜂谷大臣がきょとんとした顔でこちらを見る。
「石月さんは、子供の頃から編集者になるのが夢だったんです! お仕事をしているときの石月さんは、本当に真剣で楽しそうなんです! だから、無理やり秘書になんて……!」
私の剣幕に驚いたのか、蜂谷大臣は少し黙り込み、すぐに大声を上げて笑いだした。
豪快に肩を揺らし、楽しげに笑う。
「こーんなちっちゃかったチビ助にも、こうやって心配してくれる女が出来たか」
「え……?」
今度は私がきょとんとして目を丸くする。