鬼上司は秘密の恋人!?
「それよりも、蜂谷大臣と石月さんって、昔から面識があったんですか?」
ハッとして疑問をぶつけると、石月さんは小さく肩を上げた。
「俺じゃなくて、親父な」
短く言って笑う。
その顔をじっと見つめていると、優しく微笑まれた。
「俺が小さい頃に死んじまった親父。政治家だったんだ」
「そうなんですか……」
石月さんの住む、都心に建つ庭のある平屋の一戸建て。
どうしてこんな大きな家が、と思っていたけれど、そう言われれば納得できる。
「その頃に、親父が蜂谷大臣に色々お世話になってたらしい。俺は全く覚えてねぇけど、向こうは覚えてたみたいで、週刊誌の政治担当になって、声をかけられた。『石月の息子か』って」
「じゃあ、秘書にっていうのは……」
「冗談だろ。俺には秘書も政治家も向いてねぇ」
「よかったぁ……」
ほっとしてその場に崩れ落ちそうになる。
そんな私を見て、石月さんは顔をしかめた。
「それより、俺が子供の頃から編集者になりたかったって、なんで知ってる?」
「えっと、それは……」
「露天風呂での話、盗み聞きしてたのか」
「盗み聞きというか、聞こえちゃったというか……」
視線を泳がせてそう言うと、石月さんがこちらを睨む。
「すいません」
話を勝手に聞いたのは事実なので、しょんぼりと頭を下げると、「じゃあお仕置きだな」と石月さんが耳元で囁いた。
「え……!?」
驚いて顔をあげると、「冗談だバカ」と笑われた。