鬼上司は秘密の恋人!?
「だいすき」
「うん! ぼくも、ゆきもトーゴもだいすき!」
そうやって道端でぎゅーっと抱きしめていると、こつりとすぐそばで靴音が聞こえた。
不思議に思って顔をあげると、呆れたような意地悪な笑み。
「なにやってんだよ」
いつの間にか着替え、コートを羽織った石月さんが、私たちを見下ろし笑っていた。
「ほら、幼稚園いくぞ」
そう言って、祐一の手を取る。
「石月さん……?」
私がきょとんとして首を傾げると、「たまには朝の散歩もいいかなと思って」と涼しい顔で言う。
「わぁい!」
石月さんと私と手を繋いだ祐一が、間でぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる。
「ほんと朝から元気だな。寒くねぇの?」
祐一の手を取って、大きくジャンプさせながらそう言う石月さん。
「さむいけど、たのしいよー」
祐一は冷たい風に頬を赤くし、白い息を吐きながら笑った。
ちらりと石月さんの顔を盗み見ると、ぶっきらぼうな口調とは反対の優しい表情で祐一を見下ろしていた。
不意に顔を上げた石月さんが私の視線に気づき、「ん?」と首を傾げる。
その表情に、胸がいっぱいになる。
誤魔化すようにあわてて首を横に振ると、石月さんは鼻にシワを寄せて吹き出すように笑った。