鬼上司は秘密の恋人!?
 


アパートに移った時にすこしだけやっていたスーパーのパートは、家が遠くなるので仕方なく辞め、今はまた『ステートメント』の編集部に戻れることになった。


「挨拶もせず突然辞めてご迷惑をかけて、申し訳ありませんでした」

そう言って深く頭を下げた私を、みんな優しく迎えてくれた。
石月さんや徳永さん経由で、事情はみんな察しているようで、あちこちから「おかえり」と声をかけられ泣きそうになる。
しかしその直後、私が以前必死に整理した資料やカウンターの上が、見る影もなくひどい状態になっていて、呆然と立ち尽くした。

「白井さんが帰ってきてくれて、ほんと良かったよ」

悪びれもせずそう言われ、苦笑しながら頷く。

「はい。これから一生懸命頑張ります」

そう言って編集部を見回して、徳永さんの隣の、私が以前座っていたデスクだけは綺麗なままなのに気がついた。

主のいないデスクなんて、一番に散らかって物置きにされそうなのに。
私がいなくなる前と、少しも変わらないその場所に、驚いて顔を上げる。

みんなの顔を見回すと、優しく微笑まれ、うなずかれた。

私の居場所がここにもちゃんとあったことに、言葉につまって口を覆った。
そんな私に気づいた石月さんがそっと近づき、つむじの辺りをこつんと叩く。

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