鬼上司は秘密の恋人!?
 
「飼っていいの!?」

キラキラと顔を輝かす祐一に、石月さんは笑って頷いた。

「ちゃんと面倒見ろよ」

テレビで動物番組をやるたびに、私と祐一が『いいなぁー、飼いたいなぁー』とつぶやいていたのを見ていたんだ。

「もしかして、会社のそばにいた猫ちゃんですか?」

石月さんが野辺編集長が餌付けした猫を、こっそり面倒を見ていたことを思い出してそうたずねる。

「ん。これからどんどん寒くなるだろうから、子猫には辛いだろうと思って。病院に連れて行って、ひと通り検査と予防注射はしてもらった」
「そうなんですか。よかったねぇ。これからここがお前のおうちだよ」

そう言ってダンボールの中に手を差し入れると、子猫は少し警戒したようにくんくんと私の指先の臭いをかぎ、少し首を傾げた後小さな額を手の甲にこすりつけてきた。

「わ……、かわいい……!」

その仕草に感動して震える。
その横で祐一が羨ましそうに「ぼくもー!!」と飛び跳ねる。

「猫ちゃんを驚かせないように、そっと手を入れるんだよ。無理やり触ろうとしちゃだめだよ」

そういうと、真剣な表情で頷き、手を伸ばす。
猫はじっと祐一の顔を見上げたあと、おずおずと鼻を動かし、祐一の小さな指先をぺろりと舐めた。

「ひゃ、なめた……!」

くすぐったそうに首をすくめ、じたばたと足踏みをする祐一に、思わず吹き出す。
小さな子どもと子猫が遊ぶ姿はとてもかわいくて、顔が緩んでしまう。

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