鬼上司は秘密の恋人!?
石月さんはなにかを思案するように、しばらく視線を彷徨わせたあと、あきらめたようにため息をついた。
「……わかった。お前しばらくここに住め」
「えっ!?」
驚いて椅子から立ち上がった私を、うんざりしたように見る石月さん。
「えってお前、他に頼る当てあんのかよ」
「ないですけど……、でも」
どう考えても私を嫌っているように見えたのに、家に住まわせてくれるなんて、信じられない。
「でもじゃねぇよ。住む場所がなかったら仕事もできねぇだろうが。お前に今仕事を辞められたら、編集長や徳永に俺がいじめるからだとか責められるから、めんどくせぇんだよ」
乱暴にそう言った石月さんの声で、奥の和室で寝ていた祐一がもぞもぞと動き出した。
「ゆきをいじめちゃだめぇー…」
寝ぼけた声で言って、目をこすりながらこちらを見る。
「いじめられてないよ。ごめんね、おこしちゃった?」
てけてけと歩いてきた祐一の頭を撫でる。
「石月さんが、しばらくここに住まわせてくれるって」
「ほんと!?」
そう言うと眠そうだった目が真ん丸に開いた。
「うん。石月さんにありがとう言おうか」
「ありがとう! いちじゅきしゃっ……」
勢い良くそう言った祐一は、思い切り舌を噛んで黙り込む。
「ぶっ」
その様子を見た石月さんが吹き出した。