鬼上司は秘密の恋人!?
使っていなかった部屋を寝室用に貸してもらい、土曜日に祐一とふたりで家の大掃除をした。
あちこちの窓を開け放ち、空気を入れ替える。
照明に積もった埃を払い、物をよけ掃除機をかけ、固く絞った雑巾で畳を拭いていく。
祐一が四つん這いになって一生懸命雑巾がけをして、何度もすてんと転んで笑う。
そのうち転ぶのが楽しくなってきて、わざと畳の上にころがって、膝を真っ赤にしていた。
庭に面した縁側も、丁寧に拭くと、綺麗な木目が蘇った。
掃除の合間に祐一とふたりで縁側に並び、昨日の夕食の残りの五目ご飯で作ったおにぎりを食べながら、小さなジャングルのような庭を眺める。
長年手入れをされていない庭はたくさんの草花で溢れていた。
蔓を伸ばし野生化したクレマチスやニチニチソウ、剪定されず株が大きくなったアジサイ、名前も知らない野草が足元を覆い尽くす。
けれど以前はきっと立派なお庭だったんだろうなということは、草に埋もれた灯籠や、立派な枝ぶりの松からうかがえた。
祐一が膝から下をブラブラと揺らしながら、「ノラねこちゃん、あそびにこないかなぁ」なんて顔を輝かせてつぶやく。
初めて住む庭のあるおうちが嬉しいらしい。
「そしたら、ぼくのごはんをわけてあげて、なかよくなるんだ」
そんなことを言う祐一のほっぺたには、ご飯粒がひとつぶついていた。
それを指先で取ってあげながら苦笑いした。