鬼上司は秘密の恋人!?
月一回の雑誌の校了を終え、つかの間ののんびりとした時間。
いつもより早く自宅に帰ってきた石月さんは、リビングに面した和室に寝転んで、本の山から雑誌を引き抜き、しかめっ面で読んでいた。
仕事で編集をして、文章ばっかり読んでいるのに、家に帰ってからも本を読むなんて大変だなぁ、なんて思いながらキッチンで夕食の支度をする。
すると祐一がぺたぺたと歩いて石月さんに近づき、肘をついて本を読んでいた石月さんの背中にぺたりと覆いかぶさるように乗っかった。
「トーゴ、なによんでるの?」
「本」
「それはみればわかるよー」
「じゃあ聞くな」
祐一の言葉を短くあしらう。
そんな冷たい石月さんの対応に、祐一はもう慣れっこだ。
どうしても『トーゴさん』とうまく呼べない祐一は、自然と石月さんのことを『トーゴ』と呼ぶようになっていた。
私が『さん』をつけなさいと言っても、石月さんは呼ばれ方なんてどうでもいいらしく、『好きにさせておけ』と気にもとめない。
「祐一、石月さんの邪魔をしたらダメだよ」
料理をしながらそう声をかけると、祐一は石月さんの顔を覗き込む。