鬼上司は秘密の恋人!?
支度を終え和室をのぞくと、畳の上に仰向けに寝転んだ石月さんのお腹の上に、祐一がぺたりとくっつき寝息をたてていた。
石月さんはそんな祐一におかまいなしで、眠る祐一の頭の上に本を置きページをめくっている。
その様子を見て思わず私は声をあげた。
「あぁー、祐一寝ちゃった……!」
「人の上でもぞもぞしてるうちに勝手に寝たぞ」
「もうー、こんな時間なのに」
がっくりと肩を落とす私に、石月さんは不思議そうに首を傾げた。
「ダメなのか?」
「だって、こんな中途半端な時間に寝ちゃったら、夜寝られなくなっちゃいますよ」
「寝られなかったら、寝なければいいだろ」
「そんな、明日だって幼稚園なのに」
「別にいいだろ、一日くらい」
「でも……。もう、特別ですからね」
ふくれる私に石月さんはクスクスと笑った。
なにが可笑しいんだろうとまじまじと石月さんの顔を見ると、目が合った石月さんは「ん?」首を傾げる。
「石月さん、笑ったから」
「……いや。なんで映画やドラマの中の母親は、細かいことを口うるさく怒るんだろうと思ってたけど、本物もくだらねぇことでいちいち怒るんだなと思って」
「なんですかそれ」
むっとしている私を無視して、「こどもって体温たけぇ」なんてのんきに笑いながら、お腹の上で寝ている祐一の頬をぷにぷにとつっついて遊ぶ。