鬼上司は秘密の恋人!?
編集部で仕事をしていると、隣の島の電話が鳴った。
みんな忙しそうで誰も出る気配がないまま、ジリジリと電話は鳴り続ける。
どうすればいいのかな? と思いながら辺りを見回すと、隣の島の『月刊コレクト』という男性向けホビー雑誌の副編集長に「ゆきちゃん、お願い出て!」と頼まれた。
頷いて受話器に手をのばす。
「はい、月刊コレクト編集部です」
そう言って電話に出ると、かけてきたのはコレクトの編集者で、印刷会社に戻すゲラを間違って封筒に入れてしまったと泣きつかれた。
そのことをフロアにいたコレクトの副編集長に伝えると「ゆきちゃん、ちょっとお遣いお願いできる?」と頼まれてしまった。
「あ、はい。私は大丈夫です……」
と言いかけたとき、突然洋服の首周りが苦しくなった。
驚いて振り向くと、いつの間にか背後にいた石月さんが、私の首根っこを掴んで恐ろしい形相でこちらを睨んでいた。
「てめぇ、なにが『大丈夫』だ。いつからコレクト編集部の雑用係になったんだよ」
「い、石月さん……!」
まるで猫でももちあげるように乱暴に首の後ろを捕まえられて、恐ろしさに私は震える。
「お前は『ステートメント』の面倒だけ見てればいいんだよ」
吐き捨てるようにそう言って、私の首根っこを掴んだまま、ステートメントの島へ私を運んでいく。