鬼上司は秘密の恋人!?
 
その石月さんの態度に、コレクトの副編集長はじめ、周りから文句が飛び交った。

「石月、ずるいぞ、お前だけゆきちゃんを独り占めにして!」
「そうだそうだ! 俺たちだって、若い女の子に癒やされながら仕事したいんだぞ!」

ブーイングの嵐に石月さんが怒鳴る。

「うるせぇ! ひとんとこの契約社員を勝手に『ゆきちゃん』なんて馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇ! 女と話してぇならキャバクラでも行け! こいつはウチのだ!」

大声で一喝すると、それまでうるさかった編集者たちが口をへの字にして黙り込む。
恨みがましい視線にシャーっと歯を剥き威嚇しながら、ステートメントの島までもどってきた石月さんは、椅子の前で私の首からようやく手を離してくれた。

そして、ヘナヘナと椅子に座り込む私を見下ろし、恐ろしく不機嫌そうな表情で睨んだ。

「お前、ほんと鬱陶しい」
「す、すいません……」

恐怖で縮み上がる私を見て大きく息を吐き出すと、石月さんは大股でフロアから出ていった。

あー、また石月さんを怒らせてしまった。
それなりに仕事を覚えて、職場にも馴染めるように頑張ってるつもりなのに、石月さんには怒鳴られてばかりだ。

がっくりと肩を落とし、デスクにつっぷして反省していると、隣からクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。
ちらりと顔を上げると、そこにいたのは徳永さん。


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