鬼上司は秘密の恋人!?
「別に私は騙されてません! それに顔だけなら石月さんの方がずっと……」
そこまで勢いよく言って、黙り込む。
「ん? 俺の方がなに?」
「なんでもないです!」
不思議そうに首を傾げてこちらを見上げる石月さんに、私は慌てて背を向け歩きだす。
「石月ー! そうやってすぐゆきちゃんをいじめるなよー!」
私たちのやり取りを見ていた他の雑誌の編集者から、そんなからかいの声が飛んできた。
「いじめてねぇよ! ってか、いい加減その馴れ馴れしい呼び方やめろ! 鬱陶しい!」
子供みたいな口喧嘩をする石月さんを横目で見て、はぁーっと大きなため息をつく。
「相変わらず、鈍いよね」
いつの間にか私の背後にいた徳永さんにそう声をかけられ、驚いて飛び上がった。
「に、鈍いって、どういう意味ですか?」
まさか私が石月さんに惚れているのがバレたとか!?
恐る恐るそう聞くと、徳永さんは含み笑いで首を横に振る。