鬼上司は秘密の恋人!?
祐一とふたり、リビングに面した縁側に座り、頬杖をついて庭を眺めていた。
まったく手入れがされていない、小さなジャングルのような庭。
紫の小さな花をつけた野菊に、ふわふわとした花穂のネコジャラシ。風に揺れるススキ。
「バジルとかミントもいいよね。でも一番は大葉かなぁ」
「ぼくはミニトマトがいいなぁ」
「ミニトマトもいいねぇ。ナスとかピーマンも。そういうのはやっぱり鉢植えの方がいいのかな」
「あとね、じゃがいもとさつまいも。おいもほりしたいなぁ」
「とれたてをアルミホイルで巻いて、焼き芋したいねぇ」
秋の庭を眺めながらそんな話をしていると、「なにしてんだ」と背後から声をかけられた。
「わ、石月さん!」
いつの間に。
物音がしなかったから、帰ってきたことに気づかなかった。
「トーゴ、おかえり!」
「ん、ただいま」
とびついてくる祐一をあしらいながら、ぽんぽんと頭を叩く石月さん。
ジャケットを脱ぎソファに腰掛ける。
「いまね、お庭でなんのおやさいをそだてるか、かんがえてたんだ」
「庭に?」
祐一の言葉に首を傾げた石月さんに、慌てて説明する。