鬼上司は秘密の恋人!?
「こんなに大きな庭があったら好きなお野菜を育てられるねって話をしていただけで、本当に植えるつもりじゃないですから!」
「そうなのか? 別に植えたいなら植えていいぞ。どうせ庭は使ってないし」
「でも……」
「面倒ならいいけど」
不思議そうに首を傾げる石月さんに、私は黙り込む。
だって野菜を植えたら、苗が育って実るまで、ずっとここにいさせてもらうっていうことで、そんなずうずうしいことをしてもいいのかな。
私達がここにいることが、邪魔じゃないのかな。
「ほんとう? じゃあぼくだいこんがいいな!」
目を輝かせた祐一に、石月さんは呆れたように笑った。
「大根って、地味だな」
「じみじゃないよー、おいしいんだよー。ねぇ、ゆき?」
「そうですよ。大根は美味しいです!」
気を取り直して祐一を顔を見合わせうなずき合う。
「煮てもいいし、サラダにしてもいいし、無農薬なら葉っぱまでちゃんと食べられるし!」
「葉っぱを食うのか? 大根の?」
きょとんとした石月さんに向かって、力強く頷く。