鬼上司は秘密の恋人!?
「めんどくせぇな」
「でもかわいいよね」
「まぁ、不細工ではないかな」
好き勝手な事を言うふたりを、振り返って睨んだ。
「悪口、聞こえてますよ」
真っ赤な顔でそう言うと、ふたりは顔を見合わせて笑っていた。
足元に視線を落とすと、月明かりで薄っすらとした影が出来ていた。
太陽の作る影とは違う、輪郭のぼやけた柔らかい色の影。
その自分の影を見ながら歩いていると、大と小、ふたつの影が私を追いかけてきて隣に並んだ。
祐一と石月さんと私。三人並んで家へと帰る。
そんな些細なことが、泣きそうなほど幸せだと思った。
……だけど、この幸せに慣れちゃいけない。
この生活がずっと続くわけじゃないんだから。
私は三人の影を見下ろしながら、心の中でそう自分に言い聞かせた。