鬼上司は秘密の恋人!?
次の朝。
大中小、三つ並んだお弁当を前に、私は腕を組み唸る。
昨日、コンビニで買ってもらったはんぺんのお礼に、石月さんの分のお弁当を作ってみたんだけど、やっぱり余計なお世話のような気がしてきた。
きっといつもは外で食べてるんだよね。
お弁当なんて必要ないかな。
「ゆきー? 幼稚園行かないのー?」
もうとっくに幼稚園の制服を来て準備万端の祐一が、焦れたように玄関でぴょんぴょんと跳ねる。
「あ。ごめん! 今行くね!」
慌てて祐一の分と自分のお弁当を、それぞれのバッグに詰める。
やっぱりお弁当を渡すのはやめよう。
これは冷蔵庫に隠しておいて、夕飯の時に私が食べよう。
そう決めて振り返ると、石月さんがまだ眠そうな顔で立っていた。
私はいつも九時半に出社するけれど、石月さんはある程度出社時間が自由なようで、割りと朝はのんびりしている。
「なにやってんだ、さっきから難しい顔して」
「え、っと、石月さん……! これは、その」
慌ててお弁当箱を体の後ろに隠す。
その仕草に気づいた石月さんは、身を乗り出し私の背中を覗き込む。