鬼上司は秘密の恋人!?
石月さんは一日外で取材だったらしくて、お昼も編集部にはいなかった。
私が作ったお弁当を食べてくれたのかどうか、気になってずっとそわそわしてるなんて、自分でもバカみたいだなと思う。
そんなことを考えながら夕飯の支度をしていると、玄関の引き戸が開く音がした。
廊下に出てみると、そこに石月さんがいて、私に気づいて小さく笑う。
「早かったですね」
「いや、これからもう一件取材に行く」
「そうですか」
なにか忘れ物でも取りに来たのかなと思って首を傾げていると、ポイとお弁当箱を渡された。
「弁当、うまかった」
「え?」
きょとんとしながら軽くなって帰ってきたお弁当と石月さんの顔を見比べていると、「それじゃ、行ってくる」とだけ言って、石月さんが踵を返す。
「あ、はい。いってらっしゃい」
慌てて石月さんの背中にそう声をかける。
「ん」
短く頷いただけで振り返りもせず、彼は行ってしまった。
一体石月さんはなにをしに家に戻ってきたんだろう。
玄関にひとりのこされ、ぽかんとしたまま立っていると、物音を聞きつけた祐一がパタパタと廊下をかけてきた。