鬼上司は秘密の恋人!?
「トーゴかえってきたのー?」
「あ、ううん。少し寄っただけみたい。これからまたお仕事だって」
「なんだぁ。トーゴにあいたかったなぁ」
残念そうに肩を落とす祐一に、「そうだね」と相槌をうちながら、キッチンに向かう。
ご飯支度のついでにお弁当箱を洗ってしまおうと蓋を開くと、中身はキレイに洗われていた。
あの石月さんが、お弁当を食べて、わざわざ自分で給湯室でお弁当箱を洗ったのかな、なんて思うと少しおかしい。
胸の辺りがむずがゆくて、緩む頬をこらえながら二段目の蓋をあけると、小さなチョコがひとつ入っていた。
綺麗な赤い銀紙に包まれたハートの形のボンボンショコラ。
空のお弁当箱の中で転がるそれを、そっと指先で持ち上げた。
きっと石月さんは、お弁当のお礼にと、深く考えないでその辺にあったチョコレートを入れただけなんだろう。
もしかしたら貰い物かなにかで余っていたお菓子をひとつ、祐一に分けてくれたつもりなのかもしれない。
だけど……。
リビングでテレビを見る祐一を横目で見ながらそのチョコをポケットの中に忍ばせた。
祐一には、今度子供用のチョコレートを買ってあげるから、だから、これは私がもらってもいいかな。
石月さんの優しさを、少しだけもらってもいいかな。
小さな罪悪感に、胸がドキドキと高鳴った。