鬼上司は秘密の恋人!?
いつものように編集部で雑用をこなしていると、お昼過ぎに徳永さんが慌てた様子で編集部に入ってきた。
「編集長、石月チーフ、日東新聞の夕刊見ましたか!?」
いつも冷静な徳永さんの取り乱した様子に、校了を終えてどこかのんびりとしていた編集部の空気が一瞬で変わった。
その場にいたステートメントのメンバーが一気に集まる。
「どうした」
石月さんが低い声で問うと、徳永さんはデスクの上に新聞の夕刊を広げた。
「澄川ホールディングスが粉飾決算とトップの横領……?」
石月さんが社会面に掲げられた、黒地に白抜きの見出しの文字を読み上げると、編集部の空気がざわりと揺れた。
「澄川ホールディングスのCEOって、ステートメントの最新号でインタビュー載ってんじゃん! お客様第一にって企業理念を声高らかにうたってたのに、横領ってなんだよ。嘘ばっかりじゃん」
若い編集者の鳴瀬さんの言葉に、石月さんが舌打ちをした。
「徳永くん。この記事の信憑性は?」
編集長が新聞の記事に目を通しながら、冷静な声で徳永さんにたずねる。