鬼上司は秘密の恋人!?
 
「警察は実際に動いているようです。今、自分と同期の社会部の記者にも探りを入れてますが、日東がここまで大きく報道してるのなら、裏が取れてるのは確実でしょうね。どうします?」

徳永さんが編集長と石月さんに目配せする。

「メイン記事ではないとはいえ、横領の容疑が掛かった経営トップの企業理念なんてしらける記事、俺は読者に読ませたくねぇ」

石月さんは乱暴にそう言った。

「でも、背任容疑の掛かったトップの逮捕直前の理想論なんて、なかなか読めるもんじゃない。逆に注目を集めて売上が上がるかもよ?」

そう言った編集者を石月さんが睨む。

「うちはゴシップ週刊誌じゃねぇ」

低い声でそう言うと、編集長を見やる。
編集長が少し黙り込んだのを見て、石月さんは最新号の校了紙を持ってきてデスクに広げた。

「表紙には澄川ホールディングスの名前は入ってない。訂正するとしたら目次と記事の計五ページ。徳永、印刷所の営業に電話して、とりあえず一折と四折の印刷止めてくれって連絡頼む。あと差し替えになった場合、記事のデータ送るまでに何時間猶予をもらえるか。もし記事が差し替えになったときは、後日印刷所の工場に俺と編集長で土下座でもなんでもしにいくから頼むって」

「編集長と石月チーフ、ふたりの土下座なんて、印刷所の工場長も怯えるだけで謝罪にならないとは思いますが、わかりました。連絡します」

石月さんの言葉に徳永さんが頷いて、受話器を持ち上げる。

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