もう一度届きますように。
街に出て雑貨屋から服屋まで
一通り店を回る。

イヤホンから流れる音楽はinfinityの曲ばかり。
どこにいてもなにかしらツバサの声やぬくもりを求めてしまう。

ドロドロと自分の中から何かが流れて
何かわからないまままた渦を巻いて
私の中を掻き乱していく。


ツバサと私が寝た次の日に
ユウさんは私たちの関係に気づいた。

ユウさんいわく
『キヨが女の顔になって、ツバサが男の顔になってたから。』

キヨさんは店の中で恋愛しなきゃいいよと笑った。
プライベートはお互いに任せる。
けど店の中ではお客さんと店員の関係だよと
いつもの笑顔で言った。




イヤホンの音楽が止まり
着信音が流れる。


ディスプレイにはユウさんの名前。

『ユウさん?』
《俺!カケル。キヨ?》

明け方まで飲んでいたせいか心なしか
声が枯れている。

『カケル?どうしたの?』
《飯おごる。なんか食べいこーや。
Amanecerで待ってる。》

そう言うと私の返事も待たずに
電話は切れてしまった。


『はぁ…。』

自由さに思わずため息をつく。
しかしほっとくわけにもいかないので
店に向かう。
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