もう一度届きますように。
レンに名前を呼ばれるまで
ずっとぼーっとしていた。

半年、レンと出会ってからは特に
ツバサのことはもう忘れたと
自分に言い聞かせてた。

部屋にツバサの面影はない。
元からツバサは時々来ては
その日に帰る人だったから
ツバサの私物なんてものはなくて
バーの方もユウさんが気を使ってか
infinityが来る日は私を休みにしてくれていた。

ツバサの歌声を聴いても
さっきステージに立っているところを見ても
どうもしなかったのに。

ツバサに触れられた途端、
記憶が蘇る。


私は何をしてたんだろう。
レンという人がいながら
ずっとどこかでツバサのことを
考えてたのかな。
こんなにも簡単に
ツバサにまた縛られてしまうんだろうか。


ツバサに触れられた手は
まだその感触を覚えてる。

最後に会った日、
話そうと言ったツバサの手を
私は離した。

今回はツバサから私の手を静かに離した。
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