もう一度届きますように。
夜、久しぶりにバーに出勤した。

『ユウさん、
しばらく休みもらってごめんね。』
レンと週末に予定があったり
サロンの仕事が忙しかったりして
なかなか出勤できなかった。

『いいよ、全然。今日はどうだった?』
ユウさんは話すことより
人の話を聞く方が好きみたいで
よくお客さんが来るまで
2人でいろんな話をしていた。


『ユウさん、私レンと別れたんだ。
レンと一緒に行ったロックフェスで
偶然ツバサに会って、
そしたらツバサとのこと全部思い出して
レンと一緒にいる自信がなくなった。』
『キヨ、5年間って長いよ。
俺もナナが死んでからもう10年経つけど
未だにナナのこと忘れられないや。』


ユウさんはぽつりと言った。

ナナは私の姉でユウさんの彼女だった。
私が15歳の頃、当時23歳だったユウさんと20歳だったお姉ちゃんは2人で東京に上京した。
2人でAmanecerをオープンさせた。
けれどその年の12月、
お姉ちゃんは交通事故で亡くなった。
< 97 / 137 >

この作品をシェア

pagetop