暴走族に恋をする。
「別にいいんです。もともと私と快斗じゃ釣り合ってなかったんで。」
俺が謝っても、それを別れと判断する桜子ちゃんをみて、俺はもう、桜子ちゃんを後ろから抱き締めていた。
「頑張らなくていいから。
俺はそのままの桜子ちゃんが好きだから。」
俺は知ってたんだ。
この子は相手のために頑張らないと愛してもらえないと勘違いしてるって。
その間違った愛情の中で育ってきたんだってちゃんと知ってたんだ。
「だからもうそんなに強がんないでよ。」
俺の前だけでは、もうなにも頑張らなくていい。
好きなことを好きなだけやっててほしい。
めんどくさくて地味になったっていい。
好きならおしゃれをしてたっていい。
俺の前ではその肩の力を抜いててよ。
「……嫌いになったんじゃないんですか?」
「なるわけないじゃん。
俺は桜子ちゃんのことが大好きだよ。」
心の底から、ありのままの桜子ちゃんが好きだ。
「……そっか、よかった。」
そう、少し笑う桜子ちゃんを見て、俺の胸は締め付けられた。
俺が傷つけたのに、自分のことばかり責める桜子ちゃんの真っ直ぐすぎるところに、俺は甘えてたのかもしれない。
「……ごめんね。俺が悪いのに。」
「いえ、私が悪いんです。
今度からは、ちゃんと快斗に聞いてから努力します。」
こんなに頑張ってくれてる子に努力をしろなんて言った俺は頭がおかしかったのかもしれない。
「……もう頑張らなくていい。
俺はおしゃれが好きな桜子ちゃんの過去も、
地味で仕方ない桜子ちゃんも、
勉強を頑張る桜子ちゃんも、
こうやってなにもせずにボーッとしてる桜子ちゃんも、
お兄さんを想って暴走族が嫌いな桜子ちゃんも
どんな桜子ちゃんでも大好きだから、頑張らなくていい。
俺の前だけでは、ありのままの桜子ちゃんを見せてよ。
俺の前だけでは、力抜いてよ。」
俺がそういうと、前を向いたままだった桜子ちゃんは下を向いた。
そして小さく笑った。