暴走族に恋をする。
「でも、お父さん厳しいの?」
「んー、まぁどちらかと言えば厳しいけど、自分の名誉のためって感じ。
俺に免許許可してるのももう諦めで、無免で運転させないためだろうし。
でもやることやればそんなうるさく言われないけどね。
さすがに夜遅くまで女の子を家につれてたら言われるかな。」
ふーん…思ったよりまともな人なんだな。
快斗のお父さんだからてっきり…なんて言ったら失礼だけど。
「あ、帰り道は桜子ちゃんち前の道通らない方がいいよね?」
「んー…そうだね。
親はいないけど、知り合いに見られてお母さんに伝わるのもやだし。」
「わかった。」
………なんて、本当失礼。
でも、快斗との交際をお母さんが認めるなんて、絶対ありえないから
なるべく見つかる危険は避けたいんだ。
「桜子ちゃんの両親はなんの仕事してるの?」
「うちは両親共々公務員。」
「へー、超安定じゃん。」
「…まぁ。
快斗のご両親は何をしているの?」
「俺んちは母さんは専業主婦だけど、父さんは政治家…かな。」
「え、政治家?」
まさか、だ。
このおちゃらけた快斗の父親が政治家だなんて、誰が想像できたことだろう。
「俺んちは代々政治家だからさ~。
なのに兄貴は美容師で俺はこんなんだから、もう途切れそうだけどね。」
「快斗はならないの?」
「え、俺?むりむり。
っていうか普通に考えてないでしょ、俺なんて。」
「そう?
頭もいいし社会常識はちゃんと持ってるじゃない。
ルールは守れてなくても、常識はある。
だから"俺なんて"なんて言わないでよ。」
今は暴走族だったとしても、この人はこの人なりのちゃんと強い正義感を持っている。
1つの命を救える、優しい心を持っている。
悪い面もあるけれど、いい面もたくさんある。
私は出会ってからの数日間で、たくさんの快斗を見てきたから
こういう人が日本を明るくしていくんだろうな、って思ってしまうくらい
素敵な部分をたくさん持っている人だから。