暴走族に恋をする。



「桜子ちゃん、おいで。」


私のそんな思いにも、話すお母様にも気にも止めず、私の手を引いて、ながーい廊下に出た。


「綺麗なお庭だねぇ…」


「まー誰かが手入れしてるしね。」


誰かがって。どんだけ適当なんだ、それ。
自分の家のことじゃないか。


「あ、ほらあそこ。
さくら寝てる。」


急に足を止めた快斗の指先には、日の当たる縁側に置く座布団の上で気持ち良さそうに倒れてるさくら。


「死んでるみたいだろ。」


なんて快斗は笑ってるくらい。
だけどそんなこと言えるのはさくらが今日もいつも通り元気なのが見てわかるからなんだろうな。


「あんな爆睡なのにな、俺が近づくとすぐに起きるよ。
ちょっと見てて?」


快斗はそういって私の手を離し、廊下を歩き出した。
そしてその足音に耳が反応し、すぐさまさくらは頭をあげた。

快斗の姿を確認して、すぐに快斗の足元にすりつくくらい快斗になついていた。


「桜子ちゃんもおいでよ。」


「あ、うん。」


快斗にすりつくさくら

そんなさくらを抱き上げる快斗


その光景が可愛すぎて、思わず見とれてしまった。


「あ、さくら」


快斗の腕の中で幸せそうに鳴いたと思ったら、さくらはその腕から抜け出した。

かと思ったら私の足元に来た。


「…え、私?」


なんてさくらに問いかけても答えなんか返っては来ないけど、私を見つめる丸い瞳に惹き付けられ、私はさくらを抱き上げた。


やっぱり、覚えてくれてる…のかな?



< 151 / 344 >

この作品をシェア

pagetop