暴走族に恋をする。
「ん、どーぞ。」
「ありがとう。」
「勉強する?」
「うん。
………でも、その前に聞いてもいい?」
「うん、なに?」
「……ご両親の出会いや入籍の流れとか聞いたことある?」
「え?うん。
母さんかなりのおしゃべりだから。
そんなの聞きたいの?」
「………今後の人生の参考に、と思って…」
「はは、なにそれ。
母さんは高校中退で水商売をしてた。
その客で父さんが来たらしくて、母さんの一目惚れなんだとさ。
本当にかっこよかったのよ~が口癖。
父さんはT大卒業したてで、その時は役所勤務してたらしいんだけど、母さんと知り合って、付き合ったらしいけどじいさんに反対されて家出して駆け落ち結婚。
でも結局じいさんが総理を辞職して政界引退してこっちに戻ってきた、的な。
まぁ俺もそこらへんはよくわかんないんだけど、父さんも覚悟したんじゃん?政治家として生きていくって。
父さんもそんなんだったからさ、兄貴にも俺にも政治家になれなんて言わないんだよな。
俺らには好きなことをさせるのが父さんのやり方。
むかつくこともあるけど、そういうところは昔から好きだね。」
そう語る快斗の顔がすごく優しくて、素直に羨ましくなった。
16歳、暴走族をやってる男の子が親のことを好きだと言える人はごくわずかだろう。
反抗的になり、親が邪魔だと思う時期なはずの男の子が親を好きだと発言する。
それがどれだけ素晴らしいことかを、私は今知った。
それは、親子の絆がなければ決してできないことだと私は知っていたから。