暴走族に恋をする。
「…さっきさ、俺にじいさんが総理で嫌なこともあったよねって聞いたじゃん?
小学生の時は本当にそれが辛くってさ。
それがばれたときに、俺の親の給料あげてくれよ的なこと言われたり
国会で叩かれたりするとその真似をされたりさ。
俺チビだし、ぶっちゃけいじめ的な感じだったんだよね。
だからかなー。こっちきたら荒れたんだよね。
小学生の時に転校してきて、小学生のくせに舐められたくねーな、的なね。
で、蓮たちと仲良くなってどんどん荒れてった。
………法律って国会で作るじゃん。
消費税が上がったときとか、公共交通機関の料金が上がったこととか、いろいろ変わる度に前の学校で責められてた。
俺のせいじゃねーし、じいさんのせいでもねーのに。
でもなにも言い返せなくてさ。
それからかな。
こんなに否定する人が多いのにどうして値上げするんだって…法律が改正されるんだって思うようになったの。
そんなの、守ってる方がバカらしいって思うようになったの。
だから俺は赤信号もいっぱい渡ってきた。」
「………そんなの、間違ってる。」
「うん、そうだよね。
わかってたよ?そんなの。
でも、それが俺のやり方だった。
決められた法律がどれだけ正しいことなのか証明するのは、それを破ることでどれだけ不利益があるかを証明することだった。」
「………え?」
「赤信号で渡れば事故に遭う。
税金を払わなければ公共のものが使えなくなる。
交通費をあげなければ快適に移動できなくなる。
それを身にもって知ることで、俺は決められた法律を正当化してきた。
………だけど、小学生なんてバカだから、それを理解してくれるやつなんていなかったんだよね。
だから俺は余計に悩んだ時期もあったんだけど、蓮たちと知り合ってそんなのがどうでもよくなった。
俺らは俺らのやり方でやる。それが俺らの決めたルールだった。
それがブラスパのルールなんだ。
………だけど桜子ちゃんは俺らに言ったよね。
"法律と言うものは国民が国民のために決めたルール"だって。
俺あれグサッと来たんだよね。
国民が国民のために決めたルール、なんてさ。
じいさんが総理ってだけで責められてたけど、あいつらはじいさんが自分のために決めた、みたいに言ってたから。
そんなんじゃねーのは俺もわかってたのに。
………でも、ちゃんとここにもわかってる子がいたんだなって。
じいさんは総理大臣だったけど、一国民として、国民のために働いてきた。それをわかってくれてる子がいたんだなって。
正しいことを正しいと言える桜子ちゃんが羨ましかった。
まだまだ未熟なところばかりの法律で、国民の理解を得られない法律もあるけど、でもそれも国民が国民のためにって同じ立場で見て決めたルールなんだよ。
少しでもいい国にしたくて、まだまだ発達途中な法律だけどさ
それでも国民を思って決めたルールなんだよな。」
儚げにそう語る快斗はいつもの快斗とは全然違っていた。
きっと快斗はおじいさんのことも大好きなんだろう。
総理大臣として国のために働いてきたおじいさんのことを誇りに思っているんだろう。
そして、今また国民のためにと頑張るお父さんを応援しているのだろう。
それだけはすごく伝わってきた。