暴走族に恋をする。
「ちょっとあっち来て。」
今度は快斗から私の手を握ってきて、この部屋から私を連れ出した。
もちろん、さくらも一緒に。
「階段上るよー」
1階の一番端にあった部屋から、真ん中にある階段まで行き、階段を上って2階の一番端の部屋……
さっきの部屋から一番遠い部屋へ、私は連れてこられた。
「…ここは…快斗の部屋?」
「そ、俺の部屋。
今はさくらの部屋でもあるけどね。」
全体的にグレーや黒の色使いのシンプルな部屋。
勉強机はないけど、小さなテープルと少し大きめなベッド、パソコン、スピーカーが置かれたこの部屋が快斗の居住スペースか。
ここはお母さんが掃除してるのかな。ここも完璧なくらいキレイだ。
「ちょっとそこら辺座ってて。」
快斗はそういってクローゼット開けたから、とりあえずベッドの上にちょこんと座るさくらの前の床に、私も座った。
「ん、あげる。」
「あ、ネクタイ…」
快斗の手には、秀明のネクタイがひとつ。
「明日からこっちしてきてね。」
「でも…私、絞め方知らない…」
「え、そうなの?」
快斗はそういうと、私の背中とベッドの間に入り込んできて座り、私の肩の上から手を伸ばしてきた。
「教えるから覚えてね。」
耳元で聞こえる快斗の声が、私の胸を高鳴らせる。
近くて、快斗の熱が伝わってきて、私の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかというくらい、ドキドキしていた。