暴走族に恋をする。


で、うちに呼んだはいいものの、まったくすることがないわけで……


「じゃあ、お父さんは部屋にいるから。二人でごゆっくり。
ご飯できたら呼んでね。」


結局お父さんが気を遣ってくれた。


「……お父さんは本当に優しいんだね。」


キッチンにたつ私に、快斗はソファに座りながらそう言った。

ま、近いしね。


「でしょ?
厳しいこというときもあるけど、本当に優しいよ。」


「……あ、なんかいい匂いしてきた。」


「あー、ろくなもの作れないからカレーだけどね。」


「いいじゃん、好きだよ。」


「カレーを嫌う人はあんまりいないかなーとおもって。
快斗の嫌いな食べ物って知らなくて。」


「俺は蕎麦以外ならなんでも食べるよ。」


「え、お蕎麦嫌いなの?」


「アレルギーあるんだよねー。」


「あー、そうなんだ。」


アレルギーか。
アナフィラキシー…だっけ?

そういうのも怖いもんね。


蕎麦だけは気を付けないとね。


「ってかさ、桜子ちゃんって名大行くんでしょ?
学部とかって決まってんの?」


「まぁ受かればだけどね?

……お母さんは法学部って言うけど、私は社会福祉学部がいいなー。」


「なんで?」


「理学療法士になりたいから。」


「へぇ、理学療法士か。かっこいいじゃーん。
でもなんでまた理学療法士?」


「昔、私階段から落ちたことがあって、その時足を骨折したの。
その時のリハビリのお兄さんに憧れて、かな。」


「えー、男ー?」


「男って言っても30歳以上離れてると思うけど。」


今じゃきっともう40歳過ぎおじさんだよ、たぶん。


「…なんかさ、一人でも多く快適に生活できるようにお手伝いできたらなって、昔からの夢だったの。」


「夢、か。」


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